アトリエ白美「渡辺肖像画工房」 渡辺晃吉
- 平成15年7月31日(木曜日)
【晴】
去年の夏スケッチしていた稲岡の橋を作品に仕立てる。
その橋は足利市と佐野市の境界を流れる旗川に架る古い橋で、東の佐野市に入ってすぐの所にある一里塚の古木は、樹齢200年以上という。
橋の北には足尾山系の南端の低い山並が緩やかに東西に走り、旗川の流れは穏やかに南下し、やがて渡良瀬川にそそぐ。
今は本流から外れた街道の橋は、地元の人達が行き交うだけの静かな佇まいではあるが、それだけにどこか懐かしく、心をひかれる魅力があり、私の好きなモチーフのひとつである。
午前中Aギフトの社長が来室。
午後やまゆり学園の一団がうさぎ見学に立ち寄る。
梅雨が明けると、またハイカーが画室前の街道を行き交う事だろう。
本当はアイスコーヒーを用意しておきたいのだが、なかなか難しい。
とにかく冷たいものを画室に置いておく事をそろそろ考えよう。
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- 平成15年7月30日(水曜日)
【雨のち晴】
雨が上がったのでチビ兄弟を遊び場に出し、チビクロにいちゃんも入れてみたら、一応は2匹の兄貴なのでチビ達を追い駆け廻っている。
ところがチビクロにいちゃんは一番デブッちょで、おまけにのんびり屋ときてるから、すばしっこいチビ兄弟にはとても追い付けず、ただコロコロと遊び場の中を転げ回っているばかりである。
その内にチビ達からオシッコを引っ掛けられるは、思いきり蹴り飛ばされるはで、少しションボリしてしまった。
可哀想なので遊び場から出してやると、自分のケージに飛び込み、肩で息をしながらホッとした様子であった。
一番のお気に入りのチビクロにいちゃんをいじめたので、仕返しにチッピを入れたら、チビ兄弟はヘトヘトになるまで追い回され、最後には2匹共へたばってしまい、チッピにねじ伏せられていた。
いい気味である。
それを大家さんはまるで他人事のように見物していた。
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- 平成15年7月29日(火曜日)
【曇のち雨】
思い切ってチビ共を2匹以上遊び場に入れてみた。
最初は鼻白にいちゃんと歯ムキにいちゃんを一緒にすると、まだ子供のためか、ふざけているのかケンカしているのかよく分らない。
そこにチッピを入れると、明かにチッピが強く、他の2匹を追い駆け廻すが、別に相手を傷付けている様子ではなさそうだ。
そこで今度はスカンクにいちゃんを入れてみると、とたんにチッピを追い駆け廻して背中に噛付く。
勿論チッピも負けずにスカンクにいちゃんの背中に噛り付くのだが、何といっても大きさが違いすぎるので、最後にはねじ伏せられてしまう。
仕方がないので間に割って入り、スカンクにいちゃんを抱き上げると、にいちゃんは凄い鼻息で不満たらたらであった。
「何で俺だけ連れ出すんだよぅ」
口がきけたらきっとこんな口調で文句を言っているような顔付きで、それでも暴れずにケージに納まった。
遊び場に戻ってみると、ライバルのいなくなったチッピが大威張りでチビ共を追い廻していた。
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- 平成15年7月28日(月曜日)
【晴】
旧友からの便りを読む。
6月の同窓会幹事の対応、特に欠席者への対応にかなり立腹の様子であった。
明晰な頭脳と豊かな感性の持ち主だけに、無神経で思慮の浅い行為には敏感な拒否反応を示すのだが、それだけに正論を訴えてくる。
しかし、角度を変えて眺めてみれば、当事者は持てる力のありったけで対応しているのかもしれない。
それが結果として浅薄な結果しかもたらさなかったとしても、それはそれで許してやらないと少し可哀想な気がする。
世の中色々な人間がいるもので、ある人には思いを文に表す事などなんでもない事が、ある人にとっては一行の文に四苦八苦する事もあるのだ。
ともかく、彼女の言い分は誠にもっともである点に異論はない。
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- 平成15年7月27日(日曜日)
【晴】
先週に続いてあちこちで夏祭りがたけなわのようである。
画室近くの追分も今日は朝早くから人で賑い、今は少なくなった子供達を中心に、小さな神輿が地区を練歩いているのがその後に続く祭太鼓の音でそれと分る。
少し離れた別の地区でも何かアトラクションを実施しているのか、直ぐそばの喧騒に混じって微かにアナウンスの音が響いてくる。
子供の頃の祭は今と違い、町ぐるみ露地の奥までも祭一色に塗潰され、三日間は住む町が別世界に変貌するのだった。
土地を離れていた者は帰り、遠来の客は訪れ、御馳走が並び、大人も子供も顔が輝いていた。
有名な祭に出掛けなくても、かつての日本はどこでも祭は輝いていたものだったが、それも今は昔の話である。
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- 平成15年7月26日(土曜日)
【雨のち曇】
7月も末だというのに、この肌寒さは何だろう。
この様子だと梅雨明けの後は、多分猛暑になるのかもしれない。
先日今年に入って6回目の草刈りをしたので、次はお盆前でいいだろう。
ただしその前に、電動草刈機の故障を修理してもらわなければならない。
一年間保証付だから大丈夫とは思うが、万一有料なら直さない。
何しろ値段が3,900円なのだから。
電動スクーターもそろそろ寿命かもしれない。
朝途中でバッテリー切れとパンク。帰路もまたパンク。
途中から画室へと引き返し、自転車で帰宅する。
それでも引き返した事が正解であったようだ。
画室を出た直後に客が来て、両手いっぱいのオレンジとグレープフルーツを置いて行った。
その上携帯を置き忘れていたので大助かりであった。
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- 平成15年7月25日(金曜日)
【曇のち晴】
レインボー足利の南セレモニーホール開設一周年記念キャンペーンへの協力のための個展を来月に予定しているが、間をみながら新作の追加制作に入る。
あまり無理をせずに自然体で描く事が大切なので、妙な欲は出さないつもりである。
50〜60点の規模だから今手元にある作品でも充分展示できる。
内容は淡彩画と墨彩画が中心の親しみやすいもの。
当日は販売もして欲しいとの要請であるが、まず売れる事はないだろう。
それでも、キャンペーンに彩りを添えられれば目的は果せるのだ。
去年写生した館林の水門と栃木の教会をまず描き始めた。
サイズはF6号で、続いてF8とF10を各一点づつ、モチーフはひまわり畑の予定。
新作は後日ネットオークションに出品するつもりである。
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- 平成15年7月24日(木曜日)
【曇】
最近南の軒先にスズメがよく来るようになった。
大家さんのエサの残りを啄ばみに来るのだが、人を少しも恐れないところをみると、まだ子供なのだろうか。
30cm位まで近付くと少し離れるが、また直ぐに軒下の踏石の上に戻ってくる。
ただし大家さんが帰って来るとさすがにどこかへ行ってしまうが、そんなに遠くへ行くのでもなく、庭の周囲を遊びまわっているだけだ。
時々家の中に飛び込んできたスズメが、外に出る時に軒に下がったスダレに当って気絶する事はあるが、こんなに人見知りをしないスズメも珍しい。
今日チビクロにいちゃんの爪を切ってやったが、クロタンはしゃにむに抵抗してとうとう切らせなかった。
スカンクにいちゃんの爪もだいぶのびているようだが、多分切らせてはくれないだろうから、家内が来室した折に一気に皆の爪を切ろうと思う。
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- 平成15年7月23日(水曜日)
【雨】
普段は何気なく使っている言葉の中には、かなり矛盾に満ちたものも少なくないようである。
例えば「安全運転」という表現も、矛盾といえば矛盾だろう。
重量が1トンか、それ以上ある物体が時速数10kmで走る以上、生身の人間にとって「安全」などという考えは幻想にすぎないという事を車のハンドルを握る者は肝に銘ずべきなのではないだろうか。
慣れという感覚は実に恐ろしいもので、一定速度で運ばれて行く内にそれが何でもない事のように思えてくるし、ぶつからなければ、たとえ相手との間隔が1cmしかなくてもかまわないと思っている人が多い。
身勝手な運転がその日事故に結ばなかったのは、単に運が良かったのか、相手の多大な犠牲的行為によるかだけの事で、いつかは取り返しのつかない大事故を起す事は確実である。
車の運転はその人の人格が反映されると聞く。
くれぐれも恥さらしな運転だけは、他人に迷惑をかけないためにも避けたいものである。
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- 平成15年7月22日(火曜日)
【雨】
山々の尾根近くまで降りてきた雨雲が谷の風景をいつもとは全く違う佇まいに変容させて、今大沼田の谷は焼群緑色に染まっている。
ぶどう畑の脇を走り抜ける時、ぶどう棚の下の暗がりの中、何やら動くものの気配に思わず目を向けると、キジのオスがゆったりと歩いていた。
無数の波紋に彩られた田を眺めると、あちこちにはカルガモの姿があった。
こんな雨の日には集会場の軒下をねぐらにしている野良猫達も、行き場を無くして退屈しているだろう。
案の定、画室のカーテンを開けて外を見ると大家さんの姿がない。
おそらく雨が小止みになるのを待って画室にやって来るのだろうが、夜はどこで寝ているのだろうか。
来る前にエサを出しておくとカラスが来てさらって行く。
もう少し待ってみよう。その内にやって来るだろう。
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- 平成15年7月21日(月曜日)
【曇のち雨】
緑町を中心とした所謂元町の道路の両端には、一定間隔で祭提灯を立てる穴が空いていて、普段は鉄の蓋がしてあった。
祭の時がくると、元町中の道に何千本もの柱が立ち祭提灯がおよそ目の届く限り連なって、夜ともなればそこに灯が入り町は祭一色に塗り替えられるのだった。
我が家は表通りに面して三間の間口があったために、毎年祭になると町内の神輿の集会場となり、数日間は不夜城となった。
元町の祭で繰出される神輿は全部で十基。
一基の神輿には担ぎ手と世話係がおよそ300人だから、どう少なくみても3,000人からの人が道に溢れる事になる。
実際は祭を見物する群衆の数の方がずっと多いはずだから、祭の期間中は数万人の人達がひしめき合う事になるのだ。
「ドーン・ドーン・カッカッカ・ドンドンドン・カッカッカ」これが我が元町の祭太鼓のリズムである。
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- 平成15年7月20日(日曜日)
【晴】
昨夜は夏祭りの宵宮の会場の脇を何ヶ所か通り過ぎて来たので、祭の後の朝だけが醸す独特の気だるさを味わいたくて、少し遠回りしながら画室に向った。
ある会場は人一人いない空っぽの部屋のようであったり、ある場所は当番の老人がまだ3歳位の幼児に祭太鼓の打ち方を教えていたり、別の会場では何人もの町内の人達が何やら忙しそうに準備していたり、やはり祭はどんな姿でも心を引き付ける魔力があるようだ。
画室のすぐ近くにある追分の小さな神社の前でも、来週の祭のために近所の人達が出張っていた。
祭礼のちょうちんは、町内によっては極めてトラディショナルであったり、中にはセルロイド製のピンクとブルーのぼんぼりであったりと多彩ではあるが、やはり軒先に下がった祭ちょうちんに、墨痕も鮮やかな「御祭禮」の文字を見付けると、あ〃夏がきたんだなと実感する。
夜が深けふと見回すと、祭に出掛けたのか家の者の姿が見えず、遠くから伝わってくる祭の音のくぐもった響きを聞いていると、一人取り残された淋しさに思わず外に駆け出して行った子供の頃の夏の日が蘇えってくる。
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- 平成15年7月19日(土曜日)
【曇】
今日おねえちゃんがとても素晴らしい家族の元に養子に行った。
広い家と庭があり、自家菜園もあるとの事で、おねえちゃんはとても幸せな環境の中で可愛がってもらえるだろう。
チビ共の中で一番シャイで体も小さく少し心配していたが、新しい家族の皆さんの様子からその心配も消えた。
クロたんとチビねえちゃんはおねえちゃんがいなくなったので少し淋しいだろうが、チビねえちゃんは今までの狭いケージからおねえちゃんの広いケージに移れたのできっと喜んでいるだろう。
画室にはクロたんとチビねえちゃん、チッピとチビクロにいちゃん、それにスカンクにいちゃんと鼻白にいちゃん、チビたんの7匹がいる。
家の方にはお母さんとグレ、そしてチビグレとめっかちにいちゃんの4匹、合計でまだ11匹いるのだ。(チャは自分がうさぎとは思っていないので除外)
全部とは言わないが、もう少し養子に行ってもらうと助かるというのが本音である。
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- 平成15年7月18日(金曜日)
【曇】
今朝は行きながら銀行へ寄る都合があり、画室へ着くと午前10時少し前という状態であった。
チビ共がさぞかし腹を空かせているだろうと思い急いでエサを与え、ケージを掃除していると、外に何か気配がする。
さてはと庭を見ると案の定「大家さん」だった。
あの様子だと、多分朝早くからずっと待っていたのだろう。
急いで踏石の上に置いてある皿にエサを入れてやると、サッと飛んで来てかぶりついた。
生まれついての野良である「大家さん」は、野良の誇りにかけてどんな状況下でも決して人間の近くには寄り付かず、1m以内に入るとサッと逃げるだけでなく、嵐を吹いて威嚇するから大したものだ。
今日も一日、チビ共を番して守ってもらわなければならないので、少し多目にエサをやったが、別にお礼を言う訳でもなく、こっちを睨みつけながらパクついているばかりである。
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- 平成15年7月17日(木曜日)
【曇時々晴】
裁判所の交差点を南に走って行くと、前方から納豆売りのおじさんが自転車でやって来るのが目に飛び込んできた。
まだ100m近く離れているのに、サビの効いた声が早朝の大気を震わせて、辺りに広がっていく。
道を挟んで擦れ違う時、お互いに目が合ったとたん、思わず「おはようございます」と大声で挨拶を交したが、相手の方が一枚も二枚も上手というか、全然響きが違うのだ。
先日NHKの「小さな旅」に出演した折に、この仕事を始めてもう50年経ったと聞いた。
本当に凄いと思う。
しかも本業は別にあるのだから、尚更の事凄いと思う。
もう多勢のファンがいる事だろうし、恐らく動ける内はこの仕事を続けていくのだろう。
足利の名物のひとつである。
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- 平成15年7月16日(水曜日)
【曇】
昨日からプロバイダのサーバの故障で、ネットが使えない。
何とも情けないプロバイダもあったものだとほとほと呆れるが、この事で不特定多数の人達にご迷惑をお掛けしなければよいが、それだけが心配である。
この間にオークションの落札などがあっても、現状では対応のしようがない。
復旧は早くても金曜日になるそうだが、もしもその間にアクセスしてくれた方達には、何とかこの事情をご理解の上お許しいただきたいと思う。
トラブルを作ったプロバイダは「足利ケーブルテレビ(わたらせテレビ)」という会社であるが、後日、この雑記をご覧の地方の方は、間違ってもこの会社への転向などは考えない方が良いと思う。
今回に限らず、絶えず不祥事を起している会社である。
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- 平成15年7月15日(火曜日)
【晴】
午後6時40分、約束の依頼者が来室。
下描きの段階を見てもらったところ、その調子で仕上げて欲しいとの事。
午後7時少し過ぎに帰路につくが、点灯した状態でスクーターがどこまで行けるだろうか。
途中スイッチを切って歩いて節約するが、今日は湿度もなく、カラッとした気持ちの良い日なので、ウォーキングが意外に快適であった。
ひんやりとした微風が途絶える事無く吹き抜けて、少し火照った体には本当に爽やかである。
助戸の定年寺近くを歩いていると、前方から来た犬を連れたご婦人が、
「いつも押してらっしゃるのをお見かけしますが、やはり電池切れですか?」
「いいえ、道程の半分は歩いてますので、バッテリーはまだ充分にあります」
「実はうちの子供が坂の多い所に住んでいて、自転車では大変なので、バイクが欲しいと言っているんですが、このバイクは坂も上れますか?」
「あまり急な坂は無理ですが、緩い坂なら大丈夫です。その代り平地では約20km程走れるのが、多分半分の10kmそこそこに落ちるでしょうね」
「あ〃やっぱりね。それでも普通のバイクより安いようですから、これを買うように薦めようかしら」
「値段はとても安いですから、そうされると良いと思いますよ」
「せっかくお歩きのところをお止めして申し訳ありませんでした」
「どういたしまして、失礼します」
結構知らない内に、人に見られているようである。
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- 平成15年7月14日(月曜日)
【雨】
午後「ゆうパック」の集荷にやって来た郵便局の人がミニうさぎを貰ってくれる事になった。
休日に奥さんと共に再訪し、誰を貰うか決めるらしい。
聞けば庭も広いし、自然に恵まれた所にお住まいとか。
そんな所に行ったチビは広々とした遊び場でノビノビと暮せるだろう。
何と言っても野にあって飛跳ねる事が一番嬉しいのだろうが、野性ではない以上やはり人の保護下でしか生きられない。
毎朝早く画室に来てこいつらの面倒をみていると、妙に情が移ってしまう。
確かに大変なのだが、そのおかげで養子先も見付るというものだ。
本格的な暑さが来る前に皆の行き先が決ればよいのだが、そうでなかったら一度家の方に連れ帰ってやらなければならないだろう。
夜中は自宅の方が少しは涼しいだろうから。
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- 平成15年7月13日(日曜日)
【曇時々雨】
大小山の上が白く霞んだら雨になると、地元の古老の忠告を無視して近くのスーパーに出掛けたら、急に土砂降りの雨。
小学校と民家の境を流れる用水の暗渠道に張出した青桐の下に飛び込んで雨宿りしていると、その道の反対方向から自転車が一台やって来た。
「すいません少しお邪魔します」
少し場所を空けて「どうぞ、もっとこっちにお入り下さい」
「大丈夫です。直ぐに身支度出来ますので」と、その人は合羽を取り出して着始めた。
見ると自転車のカゴの中には、墓参のための花束と、多分手土産なのかジャガイモがビニール袋にいっぱい詰っていた。
「助かりましたね、こういう場所があって」
「本当にね。昔は他人様の軒先を借りたもんですが、今の家には軒先がないんですものね」
とりとめのない世間話を20分もしていただろうか。
小止みになった雨の中をその人は走り去って行った。
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- 平成15年7月12日(土曜日)
【晴夕方雨】
「こんにちは、うさぎ見せていただけますか?」
レッスンの最中にヤクルトレディがお二人来室してくれた。
(しめた、チビ達のどれかが養子に貰われていくかもしれない)
「どうぞ、見るだけでなくて貰ってくれると有難いですけれど」
「いただいてよろしいんでしょうか?」
「勿論です。貰ってくれるととても助かります」
上がってもらいチビ達を見てもらった結果、お父さん(という名のうさぎ)が欲しいとの事で、後程ケージを持って来訪する事となった。
貰ってくれるのはとても有難い反面、やはり淋しい。
でも、その他多勢ではなくて、文字通りスターとして可愛がられる方がお父さんも幸せなのだから、喜んで送り出さなければならないだろう。
ひ弱く、愛らしい生命と接していると、生命という存在の神秘と、その重さに学ぶ事が多い。
一木一草、全て生あるものの存在は、この世の奇跡なのだという真理を、小さな生命の無心の生き様に教えられるこの頃である。
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- 平成15年7月11日(金曜日)
【晴夕方雨】
朝から蒸し暑い日となり、風もなく画室はまるで蒸し風呂のよう。
少し動くと汗がジトジトと止らず、着替えも度々という訳にはいかないので、裸になっては濡れタオルで身体を拭くのだが、汗はやはり湯でないと完全には拭えないようだ。
チビ達もこの暑さには参ったのか、やたらと息が荒く、このままでは可哀想なのでケージをなるべく涼しい場所に移動。
オークション入札中の作品にラベルを貼り、新しい仕事の準備に掛る。
この天候では一般の見学者の訪問はないと思うが、念の為に土間のコーヒーを入替え、少し埃を掃う。
それにしても今日の蒸し暑さはどうだろうか。
いくら夏が好きとは言え、汗ダラダラの蒸し暑さだけはどうにも願い下げだ。
どうせ汗をかくなら、ギラギラの炎天下で滝のように汗を流したいものだ。
ベトベトと身にまつわる汗は、どうにも我慢できない。
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- 平成15年7月10日(木曜日)
【雨】
12歳の少年が4歳の幼児を殺害した事で今日本中がショックを受けている。
だが、少しだけ知性を研ぎ澄ませて身近な周囲を見回してみれば、かの少年が決して特殊な存在ではない事に気付かされるはずだ。
果して現在の地域社会が人に善悪の価値判断を教え、人間を含めあらゆる生命の尊厳と重さを教える力があるのだろうか。
交通マナーは言うに及ばず、日常生活のあらゆる面で老若男女おしなべて勝手放題好き放題に生き、ほんの僅かでもこの非を咎められると、我を忘れる程に逆切れするような有様の中で、果してまともな子供が出来るのだろうか。
親と身内の身勝手と盲愛の結果、おぞましい自己中心性の化物に育てられていく子供達が激増していると聞く。
現代社会の病理性を学術的に語る知性は持合せないが、不完全ながらもノーマルな人間として育てられた一人として周囲を眺める時、今程危険に満ちた時代はないと思うのは私だけではないだろう。
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- 平成15年7月9日(水曜日)
【曇のち雨】
帰路、画室を離れて直ぐに大降りとなった。
折良くぶどう園の棚の下の雨避けにスクーターを入れ雨具の用意をしていると、作業を中断したお母さんが腰を曲げながら近付いて来た。
見ると、婦人用の自転車が置いてあるので、このぶどう園の持ち主なのだろう。
「すみません、無断で軒先をお借りしています」
「どうぞ、あいにくの雨で大変でしょう。大小山の上が白かったので多分雨になるとは思ってましたけど、空が平らなのでこの雨は長引きますよ」
「その様ですね、濡らしたくない物を持っているので、もうしばらくお借りしてよろしいでしょうか」
「絵ですね。それは」
「そうです。この先で肖像画のアトリエをやっています」
それから30分位話が弾み、小止みになった折をみてその場を後にした。
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- 平成15年7月8日(火曜日)
【曇】
降るか降らぬかの天気の日の風景は、暗い紫色を底に秘めた神秘の色調で眼前にそそり立つ。
大望山々頂は、わずかな標高にも関らず淡くブルーがかったミルク色の中に隠れて見えない。
シャドーグリーンの中に微かなパープルの気配が見え隠れしている山腹のあちこちには、雨雲の断片が漂っている。
この調子だと間もなく一雨来るのだろうか。
今朝も露雨の中を画室まで走って来たが、幸いに着替えせずに済んだ。
午後、近所の人から電話で注文をいただき、細部の打合せの為に来室。
夕方に千葉のO氏より資料が届いたので、その旨を電話する。
風がだいぶ強くなってきたようだ。
おかげで帰りは雨にならずに済むだろう。
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- 平成15年7月6日(日曜日)
【曇】
チビねえちゃんのケージが小さくて気の毒なので、おねえちゃんと同居出来るのだったら今チッピが入っているケージに入れようと思い、二匹を遊び場に出したところ、おねえちゃんが近付くとチビねえちゃんが逃げるパターンのようであった。
この調子なら一緒にしても大丈夫と思い同じケージに入れたら、おねえちゃんは仲良くしようとするのにチビねえちゃんがどうしても受け入れてくれず、最後には狭いケージの中をバタバタと大騒ぎになってしまった。
囲いにしがみ付くようにしているチビねえちゃんの顔を見ると、目を大きく開き、歯をむいてこっちを見ている。
可愛そうなので入口を開けてやると、チビねえちゃんが飛ぶように膝に駆け上がってブルブルと震えていた。
静かに背を撫でながらなだめてやると、少し落ち着いてきたのか、鼓動も緩やかになり、呼吸も収まってきた。
本当に恐かったのだろうけれど、これでまた元の狭いケージに逆戻り。
うさぎは本来単独行動をする生き物なのだろうか。
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- 平成15年7月5日(土曜日)
【晴】
あれは夏休みに入って間もなくの頃だったろうか。
家から歩いて小一時間程ある、隣の小学校のプールからの帰り路、キラキラと照りつける太陽の下を、トボトボと歩いて行く間にどこか見知らぬ露地に踏迷ってしまった事があった。
小さいがこんもりとした森を持つ名も知らぬ社の日影に身を寄せて、近くの子供相手の店の中から聞えてくる、かき氷を作る「ガリガリ」という音を聞いていると、ひりつく程に乾いた喉がゴクリと鳴ってしまう。
体から発散する水浴直後のあの日向臭い臭いも、喉の乾きをことさら強めてしまうのか、真っ白の氷の上にかかった赤いシロップの香りまで漂ってくるような気がしてくる。
森を抜けてくる風は涼しく、日影の下の石の腰掛けの冷たさが身に快いのだが、11歳の子供にとり、激しい運動と炎天下を歩いてきた事で失った水分はかなりのもののはずで、真っ白な雲を背に翻る「氷」の一文字程魅惑的なものはなかった。
かつて季節には、その時にしかない音と香り色があったと思う。
車を降りて自分の足で世界を歩けば、今でもきっとそれがある事を発見するに違いない。
間もなく、また夏を探しての、小さな旅が始まる。
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- 平成15年7月4日(金曜日)
【晴】
お母さんと切り離されたチビねえちゃんが、今日画室にやって来た。
来た時はオドオドと落ち着かず少し可愛そうだったが、遊び場に放してやると、もう嬉しくて仕方がないといった様子で飛び跳ねていた。
しばらく遊ばせた後にケージに戻そうとしたが、他のチビ共とは比べ物にならない程の素早さで逃げ廻ってしまい、なかなか捕まえられなかった。
それでもカーコが来てさらって行くとか、ケンケンに食われるとか、大家さんにかじられるとか、あらゆる脅しをかけると、渋々と側に来て素直にダッコされた。
午後やまゆり学園の生徒さん達が、うさぎ見学にやって来た。
先生を始め、生徒さん達は、チビ達があまり可愛いので大騒ぎ。
何人かの生徒さんがタンポポの花と葉をお土産に持って来たが、朝の内に一束づつ与えたので果して食べてくれるかどうか心配したが、さも美味しそうにシャリシャリと食べてくれたので一安心。
昨日やって来たお父さんも、もうすっかり落ち着いているし、皆のんびりとしているところを見ると、チビ達にとって、ここの環境は合っているようだ。
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- 平成15年7月3日(木曜日)
【曇時々雨】
最近ひまわりの絵をよく描く。
どちらかと言えば、花をモチーフの作品はあまり得意ではないが、やはり夏の花の中で一番ダイナミックなのがひまわりなので、つい描いてしまう。
ひまわりは秋に種を蒔くと冬にも花を咲かせると聞くが、果して本当なのだろうか、是非試してみたいものだ。
先月の事、睡蓮と紫陽花のスケッチに出掛けたところ、足元を何かが駆け抜けて行った。
ビックリして正体を見れば、何とミニうさぎだった。
きっと誰かが捨てていったものだろうが、無責任な事をするものだ。
でも、当のチビ君にとっては、狭いケージで飼われているより、ずっと幸せなのかもしれないが、こういう事の積重ねが自然の生態系に狂いを生ませるきっかけとなり、最終的には人間にはね返ってくるのだろう。
今、誰の目にも我々日本人が著しく卑俗化しているのが見えていると思う。
この後に来る極端な反動が恐いと考えるのは私だけだろうか。
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- 平成15年7月2日(水曜日)
【晴】
昨夜来の雨も今朝には降り止んで、折からの陽は地上の湿気を一気に立ち上げて遠望は全て霞の中である。
午前7時少し過ぎには、既に大小山を望む所まで来ていたが、谷をぐるりと囲む山々の尾根は見えない。
道のいたる所にあるぶどう棚では、葉もツルも力強く伸びて、実も青々と逞しく成長している。
田の稲はもう30cm以上伸びて、手入れが行き届いている様子が、素人目にもそれと分る。
今年は梅が不作であったが、柿の木を見上げると若い実がたわわである。
この分だと豊かな収穫が期待できそうだ。
画室の庭の梅の木を早春に手入れしたおかげで、根元の日陰が深くなり、その下のフキもまだみずみずしく、茗荷の葉も生き生きしている。
この下は、大家さんの午後休息場所でもあるのだが、最近は画室の縁側で昼寝している時の方が多いようだ。
チビ達も大家さんの姿に慣れたのか、上がって来ても別に驚く様子がない。
昼少し過ぎ、H氏来室。
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